今回の「技術論」も、前回に引き続き当サイトに寄せられた質問メールにお答えするという形で展開してみました。
(一部「Q&A」の内容を加筆、訂正しています)

ホームページと本・DVDを拝見させていただきました。とても参考になっています。ありがとうございます。
 ツッツキの切れた下回転を強打する打ち方を教えてください。角度打ち、ミート打ちでオーバーミスが多く安定して入りません。試合後半でツッツかれると引っかけて入れるだけのスイング(回転のあまりかからないドライブ)になってしまいます。ラケット角度、スイングの軌道についてご指導いただけたらと思いメールさせていただきました。

1.ラケットを床に対し垂直にし、腰のリードでボールの高さと同じ高さでバックスイング、膝でボールの高さにあわせ踏み込みながら70パーセントの力で弾いて打つ。ホームはコンパクトにする。スイングは水平打法で打つ。弾いて打ち前進回転はあまりかからないようにパチンと打つ。

2.ラケットを床に対し垂直より少しかぶせ気味にし、ボールの高さと同じ高さでバックスイング、膝でボールの高さにあわせ踏み込みながら70パーセントの力で弾いて打つ。ホームはコンパクトにする。スイングは斜め前に弾きながら先進回転少しかかるように打つ。

3.ラケットを床に対し垂直より開き気味にし、ボールの高さと同じ高さでバックスイング、膝でボールの高さにあわせ踏み込みながら70パーセントの力で弾いて打つ。ホームはコンパクトにする。ボールが当たる瞬間に手首を返す。スイングは斜め前に弾きながら前進回転がかからないように打つ。
上記3種類でいろいろ試しながら打っています。

A.スイング方向について、後ろから前の水平スイングと 下から上の歯車式(参考http://www.pingpongfan.net/class/02/PAGE002.HTM)スイングどちらが良いでしょうか?

B.ラバーのスポンジは硬いのと柔らかいのとどちらが良いでしょうか?

私はペン表ソフト(中国式・裏面なし)使用ラケット ダーカー 7枚合板、ラバー ニッタク センレイ 厚 回転系で硬めのスポンジを使っています。好きな選手は荘則棟、江加良です。



A 「ツッツキの切れた下回転を強打する打ち方を教えてください。角度打ち、ミート打ちでオーバーミスが多く安定して入りません。試合後半でツッツかれると引っかけて入れるだけのスイング(回転のあまりかからないドライブ)になってしまいます」
 とありますが、ここが表ソフト攻撃型の最大の弱点を表わすポイントです。とくに「試合後半」になって、勝負の土壇場になると、いままで入っていたツッツキ打ちが急に入らなくなってしまうことです。これはなぜだかわかりますか?
 試合の土壇場になると、ほとんどプレーヤーは緊張します。とうぜん、勝ちたいですから。その勝ちたいという意識は、ボールを相手コートに入れようという意識につながります。この入れようという意識は、安全に入れようという意識です。そうすると、スイングはそれまでとはちがってにぶくなり、下から持ち上げるようになります。下からラケットが出ると、ネットミスは少なくなりますが、オーバーミスが出やすくなります。慎重に入れようと思ったことが、逆にスイング軌道を狂わせてミスにつながるのです。
 このことは、下級・中級に限らず、表ソフトラバーを使うトッププレーヤーにも当てはまります。日本の表ソフトラバー攻撃型の第一人者である田崎俊雄選手も、試合の前半はするどいツッツキ打ちが入って「強い田崎」なのですが、土壇場になるとまったく入らなくなって、いままでの強い田崎とは別人のようになってしまった試合を何度か観たことがあります。
 では、ここで、裏ソフト・ドライブ攻撃型のことを考えてみましょう。試合の土壇場、裏ソフトを使うプレーヤーもとうぜん緊張するでしょう。このとき、下回転ボールをドライブしてミスするケースで多いのは表ソフトと同様にオーバーミスです。表ソフトと同じ心理がはたらいて、下からラケットが出てしまって、ラケット軌道がいつもより狂ってオーバーミスが出るのです。
 このように、試合の土壇場で出るミスは、表ソフトラバー、裏ソフトラバーとも同じ傾向にあります。ただし、表ソフトラバーのほうが、接戦の局面で入らなくなるものです。それは、なぜか? それは、表ソフトラバーは「ボールを持てない」からです。
 表ソフトラバーと裏ソフトラバーの決定的な違いは、このボールを「持てる」かどうかにあります。「持てる」とは、裏ソフトラバーの粘着性によるものです。その持てる、粘着性によって、裏ソフトラバーはボールに回転をよくかけることができてトップスピンを生みだしやすくドライブが打てるわけです。
 実は、ドライブという打法は、攻撃的なのと同時に守備的なのです。スピンをかけることは、攻守両方を同時にこなしているのです。とくにループドライブはその傾向が強くなります。カットマンのカットという打法は、守備的なのと同時に攻撃的なのです。カットの変化がするどく、左右にカットでふられたりすると、カットボールというのはかならずしも守備的な打法だけではなく攻撃的要素もふくまれていると感じるのと同じことです。
 ところが、表ソフトラバーはボールを持つことができないのです。強打できない低いツッツキボールは、下から持ち上げるか、ドライブのようにひっかけるように打つしかないのです。ドライブといっても、裏ソフトラバーのような強い回転はかかりません。緊張した場面でボールが持てない。ボールを持って、ドライブというトップスイングをかけて「逃げる」ことができないのです。
 では、表ソフト攻撃型は、この最大の弱点をどうカバーすればいいのでしょうか? それは2つのポイントがあります。この弱点は、じつは最大の長所なのです。パチンと弾いて打つ表ソフトラバー独特の打法は、強力なパワードライブにもひけをとらない、いやそれよりも有効な打法です。しかも、表ソフトラバーを使うプレーヤーは少ないので、表ソフトの打球に慣れないプレーヤーが多いのです。また、ドライブ打法というのは、ものすごく身体的なエネルギーを使う打法ですが、表ソフトラバーのミート打法はそれにくらべるとはるかに省エネです。体力勝負となる持久戦には表ソフトのほうが有利です。
 もう1つは、裏ソフトラバーのように、ボールを「持てる」ようにすることです。そうドライブを使うことです。そのためには、スピンのかかる表ソフトラバーを使う必要があります。表ソフトラバーの最後の男子世界チャンピオンである中国の劉国梁(リュウ・グォリャン)は、ツッツキボールにはさかんにドライブを使っていました。ただし、あまりに「持つ」こと、ドライブをかけることに比重をかけすぎると、表ソフトラバーの特質が失われてしまって、なんのために表ソフトラバーを使っているのか意味がわからなくなってしまいます。
 正直、表ソフトラバーのこの問題の解決策はいまだ見つかっていないというのが現状ではないでしょうか。その証拠に、表ソフトラバーの世界的トッププレーヤーは、あまりみかけません。シェークハンドのバック面に表ソフトラバーを使う女子選手は、福原愛や北朝鮮の選手もいますが、男子ではほぼ壊滅状態です。
 ここで、表ソフトラバー攻撃型、復活のポイントを挙げてみました。

1.ネットより高いボールは、カット性、ドライブ性、ナックル性にかぎらず、水平スイングでオール強打する。

2.ボールの回転に反応しにくい表ソフトラバーの特性を生かして、レシーブや台上の短いボールをどんどんフリックで攻める。

3.表ソフトラバーの弱点である、ネットより低い、よく切れたカット性ボールにたいしては、ドライブで攻撃的に「逃げる」技術をマスターする。

4.ロングラリーでは、水平強打にナックル強打をまぜる。水平スイングよりもさらに上から下に、ボールを少し切るように強打すると無回転の強打となり、そのボールを打つと落ちやすく、有効打になりやすい。野平直孝(元・健勝苑)が、ラリー戦でよく使っていた打法です。

A.スイング方向について、後ろから前の水平スイングと 下から上の歯車式(参考http://www.pingpongfan.net/class/02/PAGE002.HTM)スイング
 どちらが良いでしょうか?

 とありますが、これは両方とも使えるようにするのがベターです。ネットより高い球は水平スイング、低い球はここでいう歯車式、要するにドライブ打法を使い分けるといいでしょう。

B.ラバーのスポンジは硬いのと柔らかいのとどちらが良いでしょうか?

これは好みの問題でもありますが、上記の両方の打法を使う、とくにドライブも使いたいのであれば、柔らかくて回転のかかるラバーがいいでしょう。

 また、打法について、1.2.3.とありますが、どれもまったく問題はありません。ただ、水平スイングをするときは、右利きなら、ボールの斜め右(外側)をするどくたたくと、ドライブ性、カット性、ナックル性とどんなボールでも、ほぼ同じラケット角度で強打できる万能打法になります。バックハンドなら、ボールの斜め左側(外側)です。

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