2006年度全日本
観戦リポート

今回の「技術論」は、当サイトに寄せられた質問メールにお答えするという形で、フリックの新打法について展開してみました。
(一部「Q&A」の内容を加筆、訂正しています)

卓技研の情報、大変参考にさせて頂いています。特に集中論は卓球に対する取り組みを変える契機になりました。しかし実際に実行するのは大変難しいですね。卓球に関わらず集中の持続は私の永遠の課題です。以下質問です。
 秋場様は前陣における水平打法を推奨されていますが、私も多いに賛同しています。スイートスポットの感覚は最高の喜びとなっています。全日本で活躍した田崎選手のスマッシュが目標です。
 一方、卓球王国で高島氏が技術指導ページで連載されている中「8の字打法」なるものがここのところ紹介されています(以前は楕円打法でした)。敬愛する高島氏の提案なのでとても関心が深いのですが、まず頭で理解できないし、マネしてみてもマネできません。特に卓球王国4月号のフリックを8の字打法で、というのは曲芸のレベルでした。中級から上級者になるためのテクニックと唱われているので私のレベルでは仕方ないか、とも思うのですが、ちょっと腑に落ちません。秋場様の最近の高島氏の技術論に関する見解をお聞かせ願えませんでしょうか。


A 水平打法によるスイートスポットの快感を得られたようで、当方も嬉しいかぎりです。快感だけでなく、その打球の威力も確認されたと思います。
 さて、卓球王国に掲載された高島氏の「8の字打法」についてのご質問ですが、質問を受けて当方もこの打法を試打いたしました。その試打した見解、感想を述べてみます。ただし、何度も試打したわけではなく、この打法に関しては経験も浅いことをご承知おきください。読者の方も、この打法に関しての見解やお考えがあれば、当サイトまでお寄せください。
 さて、「8の字打法」におけるフリックですが、最初コツをつかむのは難しいですが、一度そのコツをつかめば意外と簡単な打法です。卓球王国4月号109ページの写真と図解のように、8の字にスイングするのですが、この図解よりも、実際にはもっとコンパクトに振るイメージをもったほうがいいでしょう。この打法の特徴は、バックスイングでラケットの打球面を下にして、肩甲骨からヒジにかけて上にもちあげ、打球スイングへの転換において停止しないで、そのまま下の方向へローリングさせます。このローリングさせるときに、肩甲骨とヒジと手首を支点にして、腕とくに前腕がしなるようにスイングさせることがポイントです。
 この「8の字打法」の打球の威力は、同じく卓球王国の「すくい上げフリック」とくらべると、その破壊力は数倍あります。おそらく、前陣で短いボールを攻撃する打法として、「8の字打法」が今後ますます取り入れられていくと思われます。
 ただし、実際に打ってみて、故障する危険性が高い打法だと感じました。なぜなら、腕をしならせて打つので、その支点として支える、ヒジから肩にかけての負担が大きいからです。もし、マスターするなら、この部分の筋力を高めてからのほうがいいような気がします。とくに中学低学年以下の年齢や中高年は注意が必要でしょう。
 技術的なポイントは、ラケット面を外に開いて、その反動の力を利用するので、ミートポイントをつかむのがむずかしいでしょう。おそらく、最初のうちは、開いた状態でミートして、オーバーミスを連発すると思われます。
 また、この打法はすべての打球に対応した万能ストロークではなく、あくまで前陣での順足で(右ラケットハンドのフォアハンドフリックなら左足前)間に合わないときの、いわばとっさの打法に適していると思います。卓球王国のモデルの写真でも、右足が前になっていますが、当方の考え方は、余裕があるときは左足前で打球したほうが下半身のパワーが使いやすいので、左足前が良いと思います。
 卓球王国では、中級者として「すくい上げ打法」が紹介されていますが、フリック打法はこれだけではありません。せっかくですから、今回、初球、中級、上級にかかわらず、もっと簡単にマスターできて、しかもパワーがでる「水平フリック打法」をご紹介しましょう。
 「水平フリック打法」は基本的には、「水平打法=スイートスポット打法」をヒジを軸にした、コンパクトな非常にシンプルな打法です。「すくい上げ打法」では、ラケットの打球面を上にして、外に開いてボールをのせるように打っていますが、「水平フリック打法」は、基本的にラケット面を台にたいして直角に立てるようにして、ボールの斜め横を水平に振ります。このとき、バックスイングはほとんどとらないでスイングの支点をヒジにして、飛んできたボールの高さとほぼ同じ高さにラケットをもってきます。そこから、ボールの斜め横をおもいきって振りきるのです。
 また、ぜったいにラケット面を外側に開きません。ラケットを開かないので、ミート時のミスで多くあるオーバーミスが出にくくなります。打球の威力は外側に開いた反動で確保するのではなく、ミート(インパクト)からのフォロースルーの鋭さで確保します。また水平スイングで実感された方ならご理解されると思いますが、ボールの側面を水平にジャストミートすることで、打球の威力は十分に出ます。
 ボールの回転によって、ラケット面とスイングの方向は微調整しますが、飛んできたボールが、ナックル、バックスピン、トップスピンにかかわらず、基本的に上記のスイングで十分に対応できます。ポイントはバウンドした頂点をできるだけ鋭く振りきってしまうことです。
 また、「楕円打法」については、今後機会をみて展開してみたいと思います。

【返礼】丁寧な回答誠にありがとうございます。8の字打法、もうちょっと試してみます。またフリックに関して水平打法が応用できることは実感できます。極論すれば、どんな回転がかかっていようと、ネットより高い球は水平に振り抜くことができる、くらいに思っています。これからも様々な視点で卓球の世界をみんなに紹介してください。

(秋場龍一)

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