素振りについての質問が寄せられました。それは、シニアの方が多い町のクラブで、毎回コーチが素振りを30分間させており、クラブ員の多くはうんざりしているといわれるのです。
また、ボールを使った練習になると、素振りとは違うフォームになっていて、なんのための素振りなのか、果たして素振りは有効な練習方法なのか疑問を呈しておられます。
そこで、今回の指導論は、「素振りの効用」について、ご質問にお答えするかたちで展開してみましょう。

A シニアの方がおられるクラブで、30分間も素振りをさせるコーチがいるというのは驚きました。
もしかしたら、そのコーチは年輩の方ですか?
そして、フォアハンドのロングスイングなら、「フィニッシュはオデコ」というように指導する人でしょうか?

いまから、30年も40年も以前の中学の卓球部では、何百回、何千回と素振りをやらされたものです。
もちろんフォアハンドスイングのフォームをかためるためですが、新人の部員が多いとき、あまり何十人と部員がいても邪魔だし、本当にやる気がある者を選別するためにも行われました。

ご質問の、「素振りは有効か」ですが、まったく無効というわけではないのですが、30分も素振りするのなら、実際の生きたボールを打ったほうがより有効な練習になるでしょう。

素振りは、その本人が正しいフォームを認識していて、そのスイングのチェックポイントの確認ができないとあまり意味をもちません。でないと、ただただ、ラケットを振っているというピントがぼけた練習になります。

大会会場などで、試合前に素振りしている人を見ると、その素振りではちゃんとボールを打てないだろうというスイングが多いものです。これでは素振りは意味がないばかりか、デメリットにさえなります。

また、フォームをかためるといっても、かためてしまうことでデメリットも派生するのです。なぜかというと、これは当サイトの技術論(1.2)でも展開していますように、バックスイングは固定しないで、ボールの高さや長さに応じて
ラケットを引く(バックスイングの)高さを毎球変えたほうが合理的なのです。

しかし、素振りでバックスイングをかためてしまうと、実戦ではボールの高さや長さはまちまちですから、固定されたバックスイングで打って、それを相手コートに入れようとすると、スイングではなく、ラケット角度で調整するしかなく、これでは非常に不安定で、しかもみすみす強打できるボールも打てなくなってしまいます。

バックスイングをボールの高さに応じて調整すれば、基本的にネットより高いボールはすべて強打できるのですが、それがバックスイングを固定することでできなくなってしまうのです。

さらに、素振りをやりすぎることで、フォームをかためてしまうと、より高度なスイングに変えようとしても、クセがついてしまって、なかなかできなくなって、成長のさまたげになります。

ただし、素振りが絶対的に無効というわけではありません。
自分の悪いクセの矯正や、その日の調子によって調整するときにはやはり素振りは有効なものになります。たとえば、オーバーミスが多いときはラケットが下から出ているときや打球ポイントが遅れているとき、またネットミスが多いときは打球ポイントが前過ぎるときが多く、そういうときは素振りを2、3度することで、修正することができます。

普段の練習のときに、正確な自分のスイングを鏡で確認しながら身体に覚えこませておくと、試合のときには数度の素振りでいつもの調子が出るわけです。

30分も素振りするなら、その時間を多球練習に使ったほうがはるかに有効です。せっかくコーチがいるのですから、コーチがノッカーになって、どんどん球出ししてもらってボールを打ったほうがいいでしょう。
そのなかで、フォームの自己チェックということで、2、3度の素振りをやるのは有効です。

素振りをやらされている方はボールを早く打ちたいでしょうし、長い時間素振りやっていても楽しくありません。
スポーツは楽しくやるのがいちばんですから……。
(卓技研・秋場龍一)

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